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1,廃案となった入国管理法「改正」法案
フリージャーナリストによる配信とか、リベラルなニュースサイトや新聞の記事とかを読んでいたら、この社会でどれだけひどい出来事が起こっているか、いかにひどい悪法が通されようとしているか、といったニュースに接することができる。
でも、ふつうにテレビやネットを見ているだけでは、そうした社会生活に影響を与えるはずの問題が、ほとんど報道されない。朝のニュース番組で、知っておくべき短いニュースとしてすら、取り上げられのは稀である(TBSの『報道特集』のような一部の番組は別として)。
入国管理法の「改正」案も、そのようになぜかスルーされている重大ニュースのひとつだった。
人間の権利を奪うひどい内容なのに、テレビでみることはまずなかった。
でも、スリランカから日本を愛してきてくれたウィシュマ・サンダマリさん(享年33歳)が、名古屋入国管理局で尊いいのちを奪われてから、風向きが変わった。
世論の抗議を受け、入管法「改正」案は廃案となった。
それ自体は喜ばしいことだけれども、人のいのちが奪われなければ、おかしい法案を報道しない大手メディアの報道番組の姿勢に、第四の権力としての機能が極度に低下しているな、と憤りを禁じ得ない。
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2,大事なのに流されない重要法案のニュース
それだけではない。どうやら、立法・行政・司法の三権力に忖度して流されないらしいニュースは、たくさんある。
そのなかのひとつが、5月に入ってから記してきた、国民投票法「改正」法案だった。
ほかにも、デジタル改革関連法案や少年法改正法案などについても、その背後にある重要な問題が、報道番組によって掘り下げて論じられることはほとんどなかった。
デジタル改革関連法案は、市民一人一人の情報が権力に一元管理され、悪用されたり情報が流出したりする危険性がある。
少年法の改正案は、少年の更生を期待する法の理念がますます後退することを意味する。
でも、それでいいのだろうか、というニュースがほとんどなかったせいで、国民的な議論が起こらなかった。
大問題の重要土地等調査・規制法案に至っては、報道を見たことすらない。
法をつくる立法事実がなく、国民の私権が制限される危険性をはらんだ、とんでもない法案なのだけれども・・・。
(関連するサイトのURL)
https://go2senkyo.com/seijika/181114/posts/234588/
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3,より生活に直結するニュース
「地域的な包括的経済連携協定」(RCEP:Regional Comprehensive Economic Partnership Agreement)という、国民の生活や経済に直結する条約が昨秋に締結され、今年に入って具体的な詰めの作業が行われていたのだけれども、これについての何が問題か?という報道も、ほとんど目にしたことはなかった。
菅直人元首相が、「環太平洋パートナーシップ協定(TPP:Trans-Pacific Partnership)」を結んだとき、それをさんざん批判してきた前政権、現政権は、同じような話をこっそりと進めているのだから、たまったものではない。
調布市のトンネル工事現場の陥没事故も、事業者による情報統制があるからなのか、なかなか続報が出てこない。
関連するリニア新幹線のトンネル工事の危険性も、その報道を目にすることはほとんどない。
朝やお昼の「報道」番組は、政治家がどういったこういったという政治ショーばかりで、生活に直結する重大問題が、市民の目線から取材され、報道されることがほとんどない。
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4,マス・メディアへの期待
入管法の改正とか、国民投票法の改正とかが議論されているときは和歌山のドンファン殺人事件が、RCEPのときは森喜朗さんの女性蔑視発言が報道されていた。
もちろん、それらはそれで大事な事件なのだと思う。
けれども、大手メディアの報道番組からは、そうした問題だけを流しておけば、本当に大事な問題から目をそらしていられるという安心感に浸っているのではないか、とすら感じられて、仕方がない。
いったい、何に忖度しているのだろう? 政治からの圧力なんか、気にしないでほしい。
マス・メディアには、私たちが気づいていないけれど政治によって決められようとしている重要な問題、苦しんでいる人がいるけど可視化されない問題にこそ、どんどんと焦点を当て、報道してほしい。
来年以降、国会に提出されることになったこども庁設置法案などについては、ぜひとも、先手先手で、その背後にある問題を報道し、国民的な議論を喚起してほしい。