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1、朝の恒例行事
すごいことに、4歳のTくんは、自分なりの笑いの型をもっている。
朝。起きてきたTくんに「おはよう!」といっても、基本的には無視される。
あいさつで返してくれるのは、10日に1回くらいしかない。
でも、Tくんにとって、朝の無視は、パパである私が憎くてやっているわけではない。それは、朝のせわしい家族を笑顔に変えるため、Tくんにとっては必須の行為なのだ。
私が、「Tくん、おはよーってば~!」と何度も言って、抱っこしようとしたりコチョコチョしようとしたりしても、逃げたり、つれない表情になったりを繰り返す。でも、とうとう根負けして、小さい声で「おはよう」と言ってくれたり、「抱っこ~」と甘えてきたりするのだ!
そのギャップに、私もKさんも、きょうだいの上の子たちも、ついつい笑ってしまう。
家族を笑顔にするのが楽しくて、嬉しくて、Tくんはわざと、朝、私を無視するのだ。
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2、0歳児の笑いの型
最初のうちは無視して、「かまってよ~」と言ってくる年長者を引き付けて、最後にはみんなを喜ばせる、というTくんのこの笑いの型は、実は0歳児のときから始まっていた。
うちの子たちはみんなそうなのだけれど、Tくんも、笑い始めるのはとても早かった。
0歳2か月の頃には、すでにケラケラと笑っていた。そして、驚くべきことに、そのころにはもう、Tくんの笑いの型が出来上がっていたのである!
あたりまえだけど、赤ちゃんは「いないいないば~」をされると、喜んでケラケラと笑う。Tくんも始めのうちはそうだったのだけれど、「いないいないば~」を繰り返しているうち、ある変化が起こった。なんと、私たちが「いないいないば~!」をすると、最初はすました顔をして、違う方向をみたりしながら「興味ありませ~ん」みたいな態度をとるのだけれど、こっちがわざと悲しい顔をしたり、「この~!」といってコチョコチョしたりすると、「へへっ!」という感じで観念して、とびっきりの明るい笑顔を振りまいてくれていたのだ!
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3、生活のなかにあるコミュニケーション型
おもえば、くらしには型があふれている。
今回話題にしたコチョコチョでいうと、こどもたちの喜ぶ型は、四者四様だ。
長男のNくんは、幼児期、自分から「コチョコチョして~」と言ってきて、くすぐるとかなり喜ぶので続けていると、とつぜん「やりすぎだよ!」と怒って泣き出すというのが定型だった。
二男のYくんは、幼児期、コチョコチョすると、かなり我慢して「大丈夫ですけど何か?」というすまし顔を、笑いをこらえながら向けてくるのがとてもかわいかった。
長女のCちゃんは、「くすぐって~」と言ってくるので、とことんコチョコチョするのだけれど、のたうち回って笑い転げて、どうしても我慢できなくなったら逃げまわっている(今も)。
Tくんは、コチョコチョの型でいうとCちゃんに近くて、いつまでも喜んでのたうち回っている。
〈楽しい生活って、こういったいろんな型に支えられているのかもしれないな~。ところで、Tくんの笑いの型は、これからどんな発展を遂げていくのだろう? 友達との関係で、より研ぎ澄まされていくんだろうな~。それにしても、0歳から笑いのツボを押さえられているような強者だから、友達からも慕われるんだろうな~。〉
そんな親バカな妄想を膨らませながら、Tくんに無視されて快感だった朝を思い出すのだった。