拝啓 内閣総理大臣 岸田文雄 様
新年が明けて早々の1月1日、石川県で最大震度7を観測する令和6年能登半島地震が起こり、多くの地域で被害が発生し、たくさんの尊いいのちが失われてしまいました。その甚大な被害を前に、陣頭に立って指揮されている総理におかれましては、その心痛いかばかりかとお察し申し上げます。
一市民として、この被害状況を前に言葉を失っておりますが、自分自身に何かできることはないかと考え抜いた結果、総理に御英断いただきたいことがございまして、筆を執りました。それは、一説では13兆円かかるといわれている大阪万博を、とりあえず無期限の延期として頂き、浮いた財源を、①被災地の救援・復興、②被災した学生への支援、そして③今後の災害対策に回して頂けるようご検討いただけないでしょうか、ということです。
以下、それぞれに理由を述べさせて頂きます。
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①被災地の救援・復興の財源として
今回の震災では、とくに能登半島の多くの地域で、日常の生業や生活を維持できないほどの甚大な被害が出てしまいました。
多くの住宅が、ダメージを負ってしまいました。能登半島に点在する小さな漁師町の多くで、漁港の被害が深刻です。地割れや土砂崩れにより、道路の通過がままならないだけでなく、田畑へのダメージも深刻です。電気、水道、ガス、下水道などの生活インフラも復旧が見通せない状況です。
地域の観光産業への打撃も深刻です。輪島市では、地域の象徴であり、また観光の目玉でもある朝市が、大火災により焼失してしまいました。ここでもまた、尊いいのちが失われ、いまも懸命の捜索が続いています。
こうした被害を回復し、復興を成し遂げるには、おおくの資金が必要です。被災地の方がたが、復興をあきらめることなく、地域で暮らし続けたいという思いを尊重するには、国としての手厚い支援が必要になってくると思われます。地域の美しい風景と景観を守るためにも、できる限り制限のない個別補償の充実も欠かせないと考えます。
そうした財源として、万博の資金を活用してほしいと願わずにはいられません。ぜひご検討をお願い申し上げます。
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②被災した学生への支援の財源として
震災は、ちょうど受験のシーズンと重なってしまいました。多くの学生さん方が、夢や希望をもって、進学のため勉学や学芸に励んでこられたと思います。
しかしながら、震災によって家業の被害があった世帯のご子息は、保護者からの支援が望めなくなるのを悲観し、夢を諦めてしまわれるかもしれません。
ですが、自然災害によって、学生さん方が、夢や希望を諦めざるを得ない状況に追い込まれるのは、子どもたち自身の自己実現の観点からも、この国の未来にとっても、けっして望ましいことではありません。
そこで、被災地で未来を夢見る学生さん方が、被災状況によって希望の光を自ら閉ざすことがないよう、特別な修学支援制度を早急に創設してほしいと切に願わずにはいられません。
この点につきましても、ぜひご検討頂けましたら幸甚に存じます。
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③今後の災害対策の財源として
今回の震災では、緊急期の救援や捜索が難航しております。この点は、自然災害対策に特化した救援組織が存在しないことに起因しているように思われます。
今回のような震災だけでなく、火山の噴火、台風、豪雨、豪雪など、自然災害にもいくつかの種類がございます。また、災害が起こる地域も、その地形や風土は多様であり、一様の救援体制を敷いているだけでは、どうしても、とくに緊急期の支援には限界があると思われます。
そこで、今後の災害対策として、「災害レスキュー隊」(仮称)の創設をぜひご検討いただきたいのです。それぞれの地域で、それぞれの地域の地形や風土にあわせた各種災害の想定をもとに、特殊な装備を常備し、日常的な訓練を実施している災害レスキュー隊が存在していれば、被災直後の捜索や支援が、いま以上に迅速に行えるようになると考えます(この点については拙著『新潟震災ボランティア日記――被災の「自立」論?』でも述べさせて頂きました)。
わが国は、毎年、何らかの災害に見舞われる傾向にある以上、そうした災害レスキュー隊の創設は欠かせないと思われます。自衛隊員のみなさまが、国防に専念できるようになるというメリットもございます。
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以上、3点にわたって、大阪万博の財源を、被災地の支援・復興と今後の災害対策に回して頂きたい理由を述べさせて頂きました。
一市民の拙い提案ではございますが、どうかご検討のうえ、総理に御英断いただけるよう念じてやみません。
日頃の政務に加え、陣頭指揮でお疲れのことと存じます。どうかご自愛ください。
敬具
2024年1月10日(水)