◆布マスク配布報道
このニュースを最初に聞いたのは、もう1か月くらい前になる。全世帯に200円程度の布マスクを2枚ずつ配布、予算は200億円・・・。そう報道しているテレビ画面を見て、「うちは6人だから全然足りないじゃん!」とつい家族でツッコミを入れてしまった。
けれども、すぐ思い直した。水着制作会社など、いろんな異業種のメーカーにマスクを作るよう頼んできた政府は、そうした日本企業を元気にする施策を取りたいんだろうな、使い勝手のいい長持ちする日本製のマスクを、国民の皆さんに届けたいんだろうな、と。
だったら、アベノマスクもちょっとはいい面があるんじゃないかな。でも、台湾政府のように、必要な人が優先して買えるような仕組みをつくってくれたら自分で買うのに。そうすれば予算が浮いて、医療現場、介護現場に予算を集中できるのに。そもそも送料がもったいない。
ニュースを聞きながら、そういう思いが頭のなかをグルグルめぐっていた。
◆使えないマスク
そんな思いでいた矢先、配布され始めたマスクが全く使えないと介護の現場で悲鳴が上がっている、というニュースが飛び込んできた。耳にかける部分がゴムではなく、単なるひもでできているため、そもそも装着できないのだという。しかも、そのマスクはベトナム製だというのだ。
てっきり、政府が急遽マスク制作を要請した企業の製品を優先的に買い取って配布するのだと思い、だから予算も466億円に跳ね上がったのだろうとばかり思っていた私は、このニュースを見て、最初、意味が分からなかった。〈え、日本製じゃなかったの?〉〈なんでそもそも装着できないようなマスクを買うのに予算が跳ね上がらなきゃいけないの?〉と。
その後も、マスクの不具合に関する報道は続いた。先行して配られている妊婦さんへのマスクにも、虫や毛が入っていたり、血痕のあとらしきシミがあったりするというトラブルが続出しているのだという。
◆正当な批判が抑え込まれる!?
そうなると、一体全体なぜこういうマスクが届いてしまうったのか、予算や業者の選定は適切だったのか、と疑問がわく。4月22日のニュースで、ようやくこれらの点が明るみになった。朝日新聞の報道によると、福島みずほ参院議員の調査により、計3社で合計90億円かかっていることが判明したそうだ。ただし、納入企業は4社だと言われているのに、最後の1社が公表されない。しかも、今回公表されるまで、厚労省はずっと納品業者の公表を渋っていたらしい。おそらく、悪評がたって企業が追い込まれるような事態を避けたい、という配慮があるのだろう。
でも本来なら、真っ先に配慮されるべきは、税金を払っているのに不衛生なマスクが届いてしまった国民である。そんなものはとても使えないし、使ったとしても別の病気にかかってしまうかもしれない。だから、多くの人がおかしいと声をあげるのは当然である。いのちの問題なのだから。
でも、そう言った声に対し、いまは誰が悪いとか言っている場合じゃないという批判が、芸能界も含め、かなりあるらしい。いのちの問題に目をつむって、お上についていけばいいんだという意識は、なんだか75年以上前の日本の状況に似ているような気がして、私はちょっと受け入れることができない。