◆共同通信の世論調査
数日前のこと。あるネットニュースが目に留まった。
「共同通信社は28日、憲法記念日の5月3日を前に郵送方式で実施した憲法に関する世論調査の結果をまとめた。大規模災害時に内閣の権限を強め、個人の権利を制限できる緊急事態条項を憲法改正し新設する案に賛成51%、反対47%だった。新型コロナウイルス感染拡大で自民党内に議論活性化を求める意見がある一方、国民の賛否は二分している現状が浮かんだ。」(※1)
緊急事態条項の創設を支持するひとが過半数いるんだ・・・。緊急事態条項は危うい側面もあると思っているので、軽いショックを受けた。今日は憲法記念日。そこで、今日の分から何回かにわたって、危ういと思う理由について書いてみたい。
◆銀河共和国の危機!
ジョージ・ルーカス監督の超大作SF映画『スターウォーズ』では、非常時大権をめぐるやりとりが展開されている。
1万の星系から元老院議員が選出され、1000年ものあいだ軍隊をもたずに平和が維持されてきた銀河共和国。もともとは哲学者集団で、フォースを操りライトセーバーを使った護身術を身に着けているジェダイの騎士たちは、平和を維持すべく奔走していた。
そこに、自分たちの通商を有利に進めたい経済諸団体を中心に組織された分離主義者集団が現われ、強力なドロイド軍を編成し、共和国の星々を攻撃し始めた。とてもジェダイの力だけでは抑えきれない。
軍隊を創設して共和国を防衛すべきか否か。
銀河共和国議会はもめた。2000の星系代表が平和的解決を支持する要望書を出したり(※2)、惑星ナブー選出のアミダラ議員が暗殺未遂に遭うなど、紆余曲折を経て、議会は議長に非常時大権を与えた。
パルパティーン議長は、そのすぐあと、次のように演説した。
「正直、この会議の招集に際し、出席をためらいました。民主主義を愛し、共和国を愛している。与えられた大権は、危機の消滅した時点で速やかに放棄いたします。」(※3)
そして大権発動の第1号としてクローン軍が創設され、泥沼の戦争が始まった。
◆非常事態から独裁へ
それから数年ののち、分離主義者たちが、のちにダース・ベイダーに変貌を遂げるジェダイのアナキン・スカイウォーカーによって虐殺され、クローン戦争は終わった。危機は去った。しかし、パルパティーンは、「危機が去った時点で速やかに放棄します」と自ら宣言したはずの非常時大権を手放さなかった。それどころか、銀河共和国議会で次のように宣言したのだ。
「銀河の安全と安定を恒久的に維持していくために、共和国は解体・再編され、新しく第一銀河帝国が誕生する! より安全で安定した共同体に変わるのだ。」(※4)
議会に巻き起こる万雷の拍手。このとき、アミダラ議員は言った。
「自由はいま死にました。万雷の拍手の中で。」(※5)
◆すべては独裁確立という目的につながっていた!
実は、パルパティーン議長は、シスの暗黒卿でもあった。シスは、ジェダイのようにフォースやライトセーバーを操るけれども、平和な社会を破壊するためにそれらを使う共和国の天敵である。なので、ジェダイが1000年前にやっつけていたはずだった。しかし、その親玉である暗黒卿が、ジェダイにバレないよう、民主主義のルールを使って自分の権力を打ち立ててしまったのだからたまらない。
パルパティーンは、戦争がおこる10年も前に、ひそかに共和国軍のためのクローンを発注していた。クローンが成長し、戦えるようになった頃合いを見て、分離主義者をたきつけ、わざと軍事衝突を起こさせた。そして非常時大権を手中に収め、クローン戦争にまで進展するよう糸を引いていたのだ。戦争の混乱の中で、自分に権力を集中させ、議員たちの抵抗感がなくなったところで戦争に幕を引き、一気に独裁へと持っていくために。(明日に続く)
【注】
(※1)「緊急事態条項の賛否二分 憲法改正「必要」は61%」『東京新聞Tokyo Web』2020年4月29日配信(https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042801002759.html)
(※2)2000の星系の議員が平和的解決を目指すために動くシーンは、本編ではカットされている。DVDの特典映像でしか見ることはできない。
(※3)ジョージ・ルーカス監督作品・映画『スターウォーズ エピソードⅡ クローンの攻撃』(2002年)より。
(※4)ジョージ・ルーカス監督作品・映画『スターウォーズ エピソードⅢ シスの復讐』(2005年)より。
(※5)同上。