◆木材の運搬時にも二酸化炭素が!
【災害から考える4】で記したとおり、木材の生産を海外に頼ってきた日本は、海外の森を破壊することで世界の森の二酸化炭素の吸収能力を低下させ、地球の温暖化に「貢献」してしまった(とくに南洋材)。けれど、日本の地球温暖化への「貢献」には、もうひとつの重要な側面がある。それは、何千キロも木材を運ぶ際に、輸送する乗り物によって膨大な量の二酸化炭素が排出されてきた、という事実である。次の地図は、代表的な輸入材の、各地域からの距離を表している(出典:一般社団法人ウッドマイルズフォーラムウェブサイト)(※1)。
遠い国から日本へ木材を運ぶには、まず、その国で、山から港まで、伐り出した木をトラックや鉄道で運搬しなければならない。港からは、船舶で木材を日本の港まで運搬する必要がある。このとき、乗り物を動かすのは化石燃料で、化石燃料の消費によって排出されるのが二酸化炭素だ。つまり、日本での海外産材の消費は、木を伐り出して森を縮小させ、二酸化炭素の吸収能力を低下させてきたと同時に、木の運搬時に二酸化炭素を大量放出することで、地球にさらなる負荷をかけてもきたのである!
◆ウッドマイレージ
このとき、ある国が、輸入先ごとに輸入木材の量と輸送距離を掛け合わせ、それを合計した数を、ウッドマイレージという。次のグラフは、アメリカ、中国、日本、イギリス、ドイツの2014年度のウッドマイレージを表している(出典:一般社団法人ウッドマイルズフォーラムウェブサイト)(※1)。
日本は長いこと世界で一番ウッドマイレージが高かったのだけれど、いまは中国が一位となっている。だから安心していい、というわけではなくって、日本の木材輸入がたくさんの二酸化炭素を排出している事実はなにも変わっていない。
◆ウッドマイルズCO2
このとき、木材1㎥あたりの運搬にどれくらいの二酸化炭素を排出しているか示す指標を「ウッドマイルズCO2」という。次のグラフは、日本に輸入される木材が、運搬時にどれくらいの二酸化炭素を排出しているかを、産地ごとに表した値である(出典:一般社団法人ウッドマイルズフォーラムウェブサイト)(※1)。
いま、違法伐採がきびしく取り締まられているおかげで南洋材の輸入が減っているので、ここでは米材を例にとって考えてみよう。2019年のアメリカ産材の輸入量は、24万6236㎥である(※2)。それに米材の値「92㎏‐CO2/㎥」をかけると、合計で2265万3712㎏。これがアメリカからの木材輸入の「ウッドマイルズCO2」。米材の輸入に限っても、1年間でこれだけの二酸化炭素を排出していることになる。地球全体の人類活動による二酸化炭素排出量は、1年間でおよそ330憶トンくらいだから、ほかの産地も計算して足し合わせてみると、日本が、木材輸入によっていかに多くの二酸化炭素を排出しているかがわかる。
こうしてみてくると、豪雨災害に直面する私たちは、二酸化炭素の排出量を少しでも緩和するため、木材消費の多くを海外産材に依存する経済あり方がこのままでいいのか、よくないとしたらどうすればいいのか、考えざるを得ないところにきているんだと思う。
【注】
(※1)「一般社団法人ウッドマイルズフォーラム」ウェブサイトの、引用した3つの図の掲載されているページのURLはhttps://www.woodmiles.net/chart/2_index_detail.php。
(※2)「森林・林業学習館」https://www.shinrin-ringyou.com/db_import/import_of_lumber.php。