◆災害復旧活動と同じく大切な災害救助活動
災害現場においては、これまでお話してきたように、復旧作業をどう効率的に行うか、という視点も重要なのだけれど、災害発生時の救助活動は、人命が関わってくるだけに、もっともっと注目されるべきではないだろうか。
自然災害が発生したとき、救助活動を行うには、いろんな災害の特性に応じた装備が必要になってくる。けれど、災害時に派遣される自衛隊には、基本的に外国からの戦闘行為を防ぎ応戦するための装備しかない。だから、自衛官の方がたに、「もっと災害救助訓練ができていたら・・・」「災害専用の装備が充実していたら・・・」というジレンマを生じさせてしまう。
戦闘行為のための装備は、陸戦、海戦、空戦それぞれの特徴に応じて用意されている。災害も同じで、土砂崩れ、洪水、地震、噴火災害、それぞれに応じた装備がなければ、人命の救助はままならない。だったら、各地に、諸災害の特徴に応じた装備をもち、日常的に救助訓練している災害レスキュー隊が必要なのではないか。そう思うのだ。
◆災害の特徴にあった救助装備の充実を!
【災害から考える10】で紹介した水島朝穂先生は、自他ともに認める軍事マニアでいらっしゃるのだけれど、災害対策の器機にも精通されていて、『武力なき平和』のなかでもたくさん紹介されていた。
たとえば、東京消防庁には、高温の火砕流のなかでも走行が可能な救助車が装備されている。
もしも、この救助車が、普賢岳の火砕流が発生した1991年当時、現地にたくさんあったとしたら・・・。救助活動も、監視活動も、報道も、この車両と一緒ではないといけないというルールがあったとしたら・・・。多くの尊いいのちが、犠牲にならずにすんだかもしれない。
7月の球磨川水害のように、大規模な洪水が発生したとき、水難救助専門の災害レスキュー隊が現地に常駐していたとしたら・・・。同じように、尊いいのちが犠牲にならずに済んだかもしれない。
火山の近くなら噴火や火砕流、大河の近くなら洪水、雪国なら雪害といったように、地域ごとに、起こりやすい災害の特徴がある。だからこそ、各地でおきやすい災害に合わせた装備をもち、救助訓練を行う災害レスキュー隊の常駐が必要だと思うのだ。
◆世界的な視点
いつ起こるかわからない武力による侵略に備えるのは、とても大切なことである。
自然災害への備えもまた、国防と同じくらい大切なことのはずである。なぜなら、自然災害は、毎年のように発生し、多くの尊いいのちを、現実的に奪っているのだから。
毎年発生する自然災害での犠牲に、このまま手をこまねいていてもよいとは思えない。各地の災害の特徴に合った災害レスキュー隊の創設を、本気で考えてみる時機にきていると思う。
災害レスキュー隊の創設には、副次的効果も期待できる。第1に、その創設が、めぐりめぐって、日本の安全保障にも寄与するかもしれない。世界中で気候変動を要因とする災害が多発しているいま、海外からの救助要請があったとき、日本の災害レスキュー隊が駆け付ければ、平和外交につながるかもしれない。第2に、災害のための装備を充実させていけば、海外からの注目を浴び、世界での災害救助の技術向上に一役買えるかもしれない。また、そうした装備の輸出が、あらたな産業を国内で生み出すかもしれない。
もうこれ以上、自然災害で誰も悲しい思いをしないために。