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1、PCR検査を受けられずに死亡というニュースに愕然
先日5日の日曜日。衝撃のニュースが携帯電話の画面に速報として飛び込んできた。
PCR検査を断られた方が、のちに亡くなっていたというのだ。
『中日新聞』の記事によると、亡くなられたのは、金沢大学薬学系准教授、高橋広夫さん。
20日に39度の高熱が出た高橋さんは、11月21日、近くの医院を受診。インフルエンザの検査は陰性で、薬を処方されたという。
高橋さんはその日のうちに、県の発熱患者等受診相談センターにPCR検査を受けたいと電話をされた。しかし同センターは、医師の所見がなければできないと検査を断った。
だが、高橋さんは、咳が出続け、喉の痛みも続いていた。そこで24日になり、近くの医院を再受診するも、新型コロナウイルスではないと医師に診断された。
それから2日後の26日。連絡が取れなくなり心配になった奥さんから通報を受けた金沢大学の職員さんが自宅に駆け付けたところ、亡くなっているのが確認された。
そして、死後に行われたPCR検査の結果、陽性と判明されたのだという。(※1)
いまだに春先と同じ悲劇が起こっているのか!!!
もちろん直接的な因果関係は不明だけれど、それでも愕然とせずにはいられなかった。
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2、研究者としての憤り
ここからは私の妄想なのだけれども、研究者でいらした高橋さんは、苦しみの中で、そうとう憤っていらっしゃったのではないかと思えてならない。
科学は、何らかの未解明の事実を前に、その原因を探っていく営みである。
ある事実が起きる原因についての仮説を立て、その仮説が合っているかどうか調べてみる。違ったら再度仮説をたてなおし、また調べてみる・・・その繰り返しだ。
だから、ある予想が外れたら、当然、次の予想をたて、原因を探らないといけない。
今回の場合、インフルエンザではなかったのだから、研究者の常識からいえば、新型コロナウイルスへの罹患を疑うのは当然である。だから高橋さんは、医院を受診され、インフルエンザではないと分かった時点で、センターに電話をされたのだろう。
全身の倦怠感、39度の発熱とその後の微熱、咳と喉の痛み。どれも、このかん言われてきた、新型コロナウイルスを罹患した場合の症状に当てはまるのだから・・・。
けれども医師は、高橋さんをコロナ疑いと診断しなかった。医院でコロナではないと診断された高橋さんに、もう、PCR検査を受ける術は残っていなかった・・・。
痛み・苦しみのなか、悔しくて仕方なかったのではないかと思うと、本当に無念でならない。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
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3、何が診断を狂わせたのか? たんなる誤診か?
ここで俄然、疑問になってくるのが、医院の医師の診断である。
所見は、私のような素人であっても、新型コロナウイルスが疑われるものだと思える。
なのになぜ、次なる病気の可能性を予見し、適切な判断を下せなかったのか?
まったく理解できない。しかも高橋さんは、喘息の持病がおありだった。本来なら、もっとも注意すべき患者さんのはずだった。
今朝の「羽鳥慎一モーニングショー」で、玉川徹さんが「なるほど」と思う指摘をされていた。日本政府は、いまだに検査抑制政策をとっている。それが間違ったメッセージを医療現場に与えてしまっているのではないか。言い換えるなら、検査数を増やさないよう忖度が働いている、ということだろう。
玉川さんの仮説が正しかったと仮定して、今回の医師が、そうした外野の事情により判断を誤ったのか、それともたんなる誤診だったのか。真相はわからないけど、予想される事態の可能性はひろがる。
もしも後者だとしたら、文科系の研究職の私にでもわかる手続きを踏めていない時点で、どうなのかなと思う。もしも前者で、外野の事情が判断を狂わせたのだとしたら、当該医師は、いま苦しみに苛まれているはずである。自分の判断ミスをそうとう悔やまれているはずである。いや、悔やんでいると信じたい。
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4、だから、検査の拡充しかない
医療従事者に、そのような苦悩をこれ以上生まないよう、コロナかどうかの判断を医師だけに押し付ける現状は改められるべきだ。そのためにもやはり、希望者が、いつでも、どこでもPCR検査を受けられる体制の確立が急務なのだ。
たとえば、京都産業大学のように、希望する職員・学生ならだれでも受けられるように。
高橋さんの奥様の言葉は、その必要性を強く訴えている。
「検査するかどうかの判断が、医師に限られていることは良くない。ちょっとでも具合が悪いと思ったら、すぐ検査を受けられるようにしてほしい」(※2)
私たちは、一体いつまで、世界の常識となっている検査体制が必要だと言い続けなければいけないのだろう? いつまで同じような悲劇が繰り返されれば、政府は理解するのだろう? 国会を閉じている場合ではないはずだ。
ウイルスが発生してから、もう1年。検査を拡充すべきという意見が国内でも強くなってから、すでに10か月以上が経つ。全自動検査機器は日本企業が開発して世界で使われ、信頼されているし、既にわが国でも承認されている(弊ブログ2020年5月17日付記事)。でも対策は自治体に丸投げだ。
尊いいのちが無策により奪われるのは、もう本当にやめにしてほしい。
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【注】
(※1)「死亡前 コロナ検査断られ 金沢の男性 死後に陽性判明」『中日新聞』2020年12月5日付記事 https://www.chunichi.co.jp/article/165411
(※2)上記の『中日新聞』記事より引用。