~~~~~
拝啓
厳寒の候、毎日の取材活動、誠にご苦労様です。12月18日の『羽鳥慎一モーニングショー』を拝見しました、ものぐさ講師と申します。
東京都庁付きの社会部記者さんとしての鈴木さんのご活躍、これまでも時おり同番組で拝見しておりました。
ただ、鈴木さんの解説や受け答えを拝聴していて、いつもなにか心に引っかかることがありました。そのモヤモヤの原因が、18日のモーニングショーを見ていてはっきりしてきたので、一視聴者として、どうしてもお伝えしたいと思い立ち、以下に記させて頂きました。
お目通し頂けましたら、たいへん幸甚に存じます。
◇◆◇◆◇
この日の、新型コロナウイルスに関する特集の冒頭で、12月17日、東京都での新規感染者数が過去最高の822名になったという事実を受け、都庁の幹部のあいだでどういう空気になってきているか、幹部の間でどういう意見の違いがあるのか、都としてどういう対策を取ろうとしているか、国に「緊急事態宣言」を発出すべきと都が要請しようとしている等といった点を鈴木さんが解説くださり、わかりやすく拝聴いたしました。
それにたいし、コメンテーターのみなさんから、いろんな見解が示されました。
玉川徹さんは、世田谷区で行われてきた介護従事者の方がたへのPCR検査をもとに、無症状での感染率は1~2%ではないか、そうであるなら100人に1人はウイルスをもっているといえるのではないか、これはかなり大きい数字なので、強い手を打つのに躊躇している場合ではないのではないか、と意見されました。永嶋一茂さんも玉川さんに賛同され、822人という数字には驚かなかった、気を引き締めていかなければならないのではと指摘されました。
◇◆◇◆◇
吉永みち子さんは、次のように意見および質問をされました。
「マスクに関しては、日本はほんとにある意味相当世界のなかでも神経質にマスクをしている国だと思いますし、それゆえにこれだけのレベルでおさまっているという点も一面あるのかなと思います。ただ、ものすごくこう打つ手はもうない、打つ手は打っていると言うけれども、この打つ手って全部都民や国民に「あーせーこーせー」「あれするなこれするな」、この打つ手なんですよ。じゃあ東京都として、1波があって2波があって3波がきているわけですね。この間にどんな手を打ってこられたんですか、というのはもう絶対問いたいんですね。すると緊急事態宣言しかないのではないかという、いざとなれば緊急事態宣言でおとせばいいやという意識に見える、で実際にメッセージが届かないって、当たり前じゃないですか、上にいる人が全然やってないわけですから。で、こうなってくるとやっぱり政治と行政の問題が、かなり大きいなというふうに思わざるを得ない、この時期に方針が固められないっていうのは、どういうことでしょう? それからコロナ対策担当の西村大臣ですね、なんか危機感をもって注視するって、いま注視している場合かと、いま方針を定めないで、いつ方針を固めるのかと、そういうことを私たちは見ているわけですね。そのなかで、実際緊急事態宣言を出して、強制力がないからと言っているわけですよ。でもね、ここで一番ダメージを受けるのは国民なんですよ。もうこのことはね、ほんとにわたし問いたいっていう風に思います。もうほんと怒ってきてますね。」
◇◆◇◆◇
このコメントを受け、羽鳥さんは、「この点どうですか鈴木さん、打てる手は打っているのか、と感じる人もいるということですけれども」と問いかけられ、鈴木さんは次のようにお答えになりました。
「これはみんなわかっていると思うんですけれども、やっぱりワクチンと薬がない中で、どうするか、というなかで試行錯誤が続いているわけですね。で、家に居たら感染がおさまるということも、わかっているとは思うんですね。実際に東京都も、一番少なくなったときで2人くらいまで1日の感染者数は減ったんですが、そのときにも家にいてくださいというふうに呼びかけをしたわけなんですが、それをずっと継続できるかっていうとなかなか難しいところがあって、だから経済とどういう風にして回していくか、そのためにはどういうふうな対策を取るのか、もう本当に基本的なことしかないけれども、手洗い・マスクということは呼び掛けてますし、でそのための補助を出す、支援を出す、と・・・」
◇◆◇◆◇
鈴木さんのこのような回答を拝聴し、視聴者として、実は心底おどろいてしまいました。
その理由は、以下のとおりです。
私なりに解釈しますと、吉永さんは、感染がおさまっている間に、第2波、第3波に備えて、都としてできることをしてきたのか、をまずお知りになりたかったのだと思います。
たとえば、東京オリンピックの選手村を、緊急避難的に軽症者の病棟にかえる、都の責任で、経済を回すにあたり、無症状感染者がいるとまた感染が拡大するので、いつでもどこでも検査を受けられるようにする、保健所の業務を分担するため、新規に事務職を採用するなど、モーニングショーでもいろんな意見が出され、また、各地、各国の取り組みが紹介されてきたと記憶しております。
私自身も、春から夏にかけて、いろいろ妄想していました。
〈感染がおさまっているいまこそ、いざ第2波、第3派がきたときの備えができるのではないか。たとえば、緊急の都立の専門病院を立ち上げてはどうだろう? 医師団としては、リタイアされている感染症の専門医の先生を招く。看護師さんには、リタイアされている方を募る。そして、感染症対策の医療・看護技術の研修を順次行い、第2波、第3波がきたときに慌てずに済むよう、準備しておけないだろうか。〉
自分なりに国内外の情報を収集し、どういう対策がいいか考えていました。それゆえに、会見のときいつも、とん知の利いたお願いばかりの都知事にたいし、私も吉永さんと同じように失望し、いまのうちに具体策を講じておかないと、冬、大変なことになるのではないかと思っていました。
なので、吉永さんが「この時期に方針が固まっていないというのは、どういうことでしょう?」と仰ったとき〈よくぞ聞いてくれた!〉と思ったのです。
そして、その問いにたいする鈴木さんのご見解を、期待して待っていたのです。
しかし、残念ながら、マスクやうがいを呼び掛けてきたとか、正直「えっ? 都庁の人が応えているの?」と思うような代弁に終始する内容で、びっくりしてしまったのです。
◇◆◇◆◇
吉永さんも同じお気持ちだったのか、鈴木さんのお話に割って入る形で、以下のように発言されました。
「それは私十分わかっているし、やっているとは思います。ただね、実際に2波が来るだろう3波が来るだろうってことは想像がつくわけですよ。その間に、こうなったときに今何をするかっていうと65歳を70歳に引き上げましょう(原則入院の年齢)、もっといけば70歳を75歳に引き上げましょうと、そこの窓口を絞るっていうのは対策ではないと思うんです。そうならないようにするのに、じゃあこういう事態になったときに、どういうオペレーションで人員を配置していくのかとか、対応していくのかっていうことの具体的なその考え方、それが示されたとは私は思っていませんし、本当に考えているんだろうかと、今こそ考えていたことをする時期なんです。と思っているんですが、それが伝わってこないのは、そういうことは考えていなかったんですか? 東京都は。」
◇◆◇◆◇
もしかしたら、鈴木さんは吉永さんからの問いかけを勘違いしていたのかもしれない、今度こそ、社会部記者としての都の動きにたいする独自の評価が聞けるのでは、と期待しました。しかし、鈴木さんは以下のように回答されました。
「いや、第2波第3波のほうが数字が大きくなることですとか、ずーっとこうゴールが見えないなかで医療従事者の人たちも走り出されると、ずーっとゴールが見えないなかでとにかく走れという状況だということはずっと指摘されてきたことなので、そこをどう補助するかということに重点を与えているとは思うんですが、経済を止めると、それで亡くなる人も増える、そのバランスをどういうふうに・・・」
またしても、焦点がずれてしまっているご回答にがっかりしてしまいました。
議論に話を戻しますと、吉永さんはすかさず以下のように発言されました。
「たとえばね、じゃあ経済を止めるということで、それが大変なことはわかる、じゃあ経済を止めないで、ある程度の人の動きを許容しながらやっていくとしたときに、じゃあPCR検査をこのくらい増やしますとか、こういう対策で、一つの範囲にこれくらいの対策をやりますとか、そういうメッセージはあまり伝わっていないんですよ。」
◇◆◇◆◇
〈鈴木さん、今度こそ都のコロナ対策にたいする独自の評価と見解をお願いします!〉と思いました。しかし、鈴木さんのご回答は、またしても耳を疑うものでした。
「なるほど、第2波のときにはピンポイントで夜の街、ということで新宿も多かったですし、そこを徹底的に検査をすることで、やっぱりあの洗い出すということで手は打ってきたんですね。ですが、いまこう蔓延してしまっている、全域に広まってしまっているという段階で、どういうふうにするのかっていうことで、やっぱりその少しでも症状が出てきた人たちにたいして検査をできるようにということで、12月の上旬までにこれくらい検査を増やすということを、数か月前に方針を打ち出して、数を増やしてきたと、で検査数を増やして陽性者がある程度出るということも分かっていますので、じゃあ病床数どうしようかということで、段階的に医療機関に増やすことを要請して、なかなかそこで守り切れない、という場合にそなえて、自宅療養、宿泊療養のパイを増やす、ということをやってきたという状況だと思います。」
◇◆◇◆◇
愕然としました。まるで、記者会見で、都知事が、記者からの厳しい質問を受けて、「ご指摘は当たりません。対策はきちんとやってきました」と回答をしているかのような印象を受けたからです。
でも、記者さんというのは、決して、行政権力の代弁者ではないはずです。
立法、行政、司法に次ぐ第四の権力ともいわれるマスメディアの記者さんには、担当組織の動向を取材し発信するだけではなく、国内外の動きや専門家の意見などを独自に収集し、それと担当組織の動きとを照らし合わせたうえで、時に取材先に厳しい質問を行い、視聴者の関心事項を相手方から引き出すのが役割のはずだと思うのです。
コロナ対策で言えば、都知事にたいし、
「お願いばかりでいいのですか? 第三波がきたときにそなえ、都として独自の具体策は何かお考えなのですか?」
「別のところではこうした対策を取っているのですが、同じような対策を取るご意向は?」
「具体策に関して『こうしてはどうか』という意見がありますが、採用しないのですか? 採用しないのはなぜですか?」
といった厳しい質問もしなければならない、そういうお立場だと思うのです。
◇◆◇◆◇
吉永さんも、記者である鈴木さんの、都の政策の良し悪しにかんするそのような分析を訊きたかったのではないかと思います。私も同じでした。
でも、なぜだか、そこにまるで都知事や都の代表者がいるかのような、失礼な言い方で恐縮ですが言い訳とも思える回答が、記者であるはずの鈴木さんの口から延々と続いたので、びっくりしてしまったのです。
たとえば「具体策が定まっているとはいえない」、感染がおさまっている時期に「ここはこうすべきだったと思う」、「過去にこういう議論もされていたので、いま具体化すべきでは」、「こういう地域や国の取り組みをこの段階で取り入れていれば、もっと違った展開になったのでは」といった、鈴木さんなりに分析された意見を、視聴者としては伺いたかったのです。
もちろん、都知事や都の幹部の皆様とはいつも一緒におられると思うので、かばいたくなる気持ちも十分わかります。
ですが、行政権力と第四の権力と言われるメディアとは、常に緊張関係をもち、行政権力のふるまいが、主権者の権利を、いのちを守る方向になっているのか、なっていないとしたらその要因はなぜか追求するのが、記者さんの役割ではないかと思うのです。
だから、とても残念な気持ちになってしまった次第です。
◇◆◇◆◇
玉川さんが、鈴木さんと吉永さんの議論の最後を締める形で、「政治は結果なので、今これだけ増えてきたら、過去にあれだけやりましたこれだけやりましたと言ったってしょうがないんですよ。ようするに大事なのはこれからどうやって抑えるかって話ですから」と意見されていましたが、これは、まるで、責任ある行政の長が記者会見の場で記者から指摘されるような内容でした。
ですので、こうした意見が、記者である玉川さんから同じ記者である鈴木さんに向けられるのは、本来ならばおかしな話です。玉川さんの言葉は、それだけ、鈴木さんのご回答が、まるで都をかばうかのような内容に終始してしまっていた証でもあったのではないかと私は感じています。
実は、特集の冒頭の解説のときから、不安は感じておりました。
記者としてのご解説なので、本来なら、「都は~と言っています」「都は~する方針だそうです」といった第三者的な立場からの説明でなければならないはずなのに、「都は~しています」といった説明のされ方で、まるで鈴木さんが都の代表として発言しておられるような感覚に陥ったからです。
◇◆◇◆◇
ここからはご提案です。第1に、まずはそうした形式的なところから注意されてみてはどうかと思いました。そのうえで、第2に、たいへんかと思いますが、都との緊張関係のなかで、記者としての鈴木さん独自の見解を鍛え、先方にぶつけていくようにされてはどうかと、僭越ながら思った次第です。
ご無礼な内容であることは重々承知しておりますが、世界における日本の報道の自由度がどんどん下がっている中で、鈴木さんのように未来のある記者さんにはぜひ、一視聴者としてのこうした気持ちをお伝えいたしたく、文章をしたためました次第です。
どうか、一視聴者の願いをお聞き届けいただけましたら幸甚に存じます。
長文およびご無礼の段、ご寛恕いただけましたら誠に幸いです。
取材活動による激務の日々でたいへんかと存じますが、どうかご自愛のうえお過ごしください。失礼いたします。
敬具