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1、報道を受けてビビッと思い出したこと
2020年12月27日、羽田雄一郎参議院議員が53歳の若さで逝去された。
哀悼の意を表しますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
報道に接してからずっと、年末年始、学期末の忙しさでなかなか書けなかったけど、これは人災なのではないか、という思いがぬぐえずにいた。
羽田議員が、かかりつけのクリニックへ乗用車で検査を受けにいく車中、容体が急変したとの報道に、日本ではいまだあまり知られていないニューヨークのお医者さんからの春先の警告を思い出した。それは、新型コロナウイルスに感染すると、本人に自覚症状がなくても、血中酸素飽和度がかなり低くなっているケースがあるため、容体が急激に悪化しやすいという警告だった。
もしかしたら、羽田議員も、自覚症状がなくて無理されてしまったのかもしれない。
第一報を聞いたときは、そう思った。
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2、羽田議員が逝去されるまでの足取り
しかし、実際にはそうではなかったという事実を、のちの報道で知った。
12月24日。近しい人が新型コロナウイルスに罹ったため、羽田議員の秘書さんは、念のため議員のPCR検査をしたいと院内の診療所で相談したところ、症状がないと公的な検査はできないので、民間の検査を受けるように言われ、検査のできるクリニック一覧を受け取ったという。
24日に連絡したクリニックでは断られたため、25日に別のクリニック検査を予約。その後、発熱しはじめたけれども、保健所の職員さんたちが大変だと知っていた羽田議員は、PCRセンターに連絡をせず、検査日の27日まで、自宅で様子を見ることにされたのだという。
そして検査の日。クリニックに向かう車中で、「俺、肺炎かな」と言って意識を失われたのだという。
羽田議員が、ご自身の判断で検査を受けたほうが良いと考えてから、わずか3日後の出来事だった。
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3、やるか、やらぬか
もしも、24日の時点で、羽田議員が検査を受けることができていたら。
おそらくは、いのちを落とされる結果にはなっていなかったに違いない。
弊ブログでは、感染拡大を防ぐためにも、経済を回すためにも、感染者を洗い出して隔離するのが望ましいのだから、疑わしいと思った人が誰でも検査を受けられる体制を早急に確立すべきだと再三にわたり訴えてきた。
実際、海外で感染拡大を終息させている国や地域は、とにかく検査を拡大し、感染者の洗い出しを徹底的に行う方策を取っている。
日本より財政が苦しい国でも、そうした政策が実現できているのだから、あとは、マスター・ヨーダが映画のなかで言っているように、「やるか、やらぬか」の意思次第だった。
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4、人災ではないのか?
日本国内でも、弊ブログの2020年11月29日記事で紹介した通り、感染が拡がりたいへんな事態に陥った北九州市は、とにかく感染をそれ以上拡げないために、役所のいう濃厚接触者に該当しない人まで検査を徹底的に行う方式に転換し(北九州市モデル)、収束させている。
しかし、この国の政府は、市中感染が拡がってもなお、そのような体制の整備を渋り、いまだに保健所に責任を負わせる形で、検査を抑制する政策をとっている。
さきにあげたニューヨークからの警告以外にも、様々な「危ない」という声が世界中から届いているにもかかわらず、である。
そう考えると、羽田議員の死は、検査の拡充を渋ってきた政策による人災なのではないか。
年末、羽田議員の逝去の報道に接してから、頭のなかでこの思いがグルグルと渦巻いていた。
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5、それでもなお・・・
12月下旬から急激に感染者が拡大していく状況は、多くの医療関係者、専門家によって、早い段階からすでに予測されていた。それでも、政府はGo toキャンペーンを止めなかった。
本来なら、経済を回すには、先にも書いた通り、無症状感染者を洗い出し、隔離できるよう、政策を整備すべきだった。だから、Go toキャンペーンを、「新型コロナウイルスが収束してから」という閣議決定の理念に反し実施する夏の段階で、そのような体制をあわせて構築しておくべきだった。
そうすれば、羽田議員も、金沢大学の高橋准教授も、尊いいのちを奪われずにすんだはずである。
ところが政府は、このような事態を招いてもなお、3月になってからようやく、無症状の人も幅広く検査できる体制にするのだという(※)。
遅すぎはしないだろうか。
日本学術会議を敵視する姿勢に如実に表れているように、利権を優先して科学を軽視する姿勢が、失われずにすんだはずのいのちを奪い、この期に及んで検査の拡充が進まない現状を招いたのではと感じるのは、私だけだろうか。
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【注】
(※)「不特定多数にPCR検査へ 3月にも無料で」(日本テレビ)https://www.news24.jp/articles/2021/01/11/06801877.html