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1、新大統領をまちうけるいばらの道
ジョー・バイデン大統領が誕生した。
トランプ前大統領が「辞めない」とゴネはじめてから2か月余、どうなることかとヒヤヒヤしてきたけれど、アメリカの司法も、代議員も、軍隊も、そして連邦議会も、民意を尊重するという矜持を示した。
これで、アメリカ民主主義の形式は守られた。
でも、予断を許さない状況であるのは間違いない。
バイデン大統領は、結束を呼び掛けたけれど、トランプ前大統領の扇動により、アメリカにもたらされた深い分断の亀裂は、いまだ修復されていない。
前途多難である。いばらの道が待っている。
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2、あやうかった占拠事件
それを如実に表したのが、1月6日の連邦議会の占拠事件だった。
仕事中に事件の一報を目にしたときは、不安がよぎった。
議会の占拠に呼応して、トランプ前大統領が、デモ隊の支援のために軍を動かしたりしなければいいけれど、と本気で思った。その後の推移を、固唾をのんで見守った。
けれども、軍は動く気配はなく、トランプ支持派だった連邦議会の上院議員も、デモ隊にたいする非難声明を即座に発表。結果的に、トランプ前大統領と、トランプ前大統領を熱烈に支持する人たちにとっては、議会の占拠は負の作用をもたらした格好になった。
トランプ前大統領を支持していた上院議員たちの矜持が、ぎりぎりのところでアメリカの民主主義を守ったといえるかもしれない。
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3、世界への影響
でも、アメリカ民主主義の形式がなんとか守れたからといって、世界中で民主化が進み、平和も促進されるというわけではない。
トランプ前大統領によって後退させられた、世界にとって待ったなしの環境政策や防疫政策などは、ジョー・バイデン新大統領になり、協調路線に転換されるだろう。
しかし、以前の記事(2020年12月15日)で指摘した通り、アメリカの軍事プレゼンスがさらに前面に押し出されてくる可能性は否定できない。とくに、軍備増強を図り、香港への苛烈な弾圧を加えてきた中国とどう向き合うかは、新大統領の悩みの種となるだろう。
G2構想の実現へと向かうのか、それとも対立が激化するのかは、中国の出方、そしてアメリカ国内での勢力争いなど、様々な要因が関わってくる。
それだけではない。アメリカ国内の分断もまた影響する。親トランプ派が「弱腰だ」と非難を強めれば、バイデン大統領も影響されるだろう。
バイデンさんには、そうした世論や利権に影響されず、軍事に頼らない平和な世界をもたらすよう、どうか尽力してほしい。21世紀に入ってから、アフガン戦争、イラク戦争と続き、それをきっかけに宗教的な分断が深まり、テロ事件も毎年どこかで起こっているいま、そう願わずにはいられない。