~~~~~
1、ワクチンの保冷バック発送が引き起こしかねない事態。
昨日紹介した、新型コロナウイルスワクチン運搬用の保冷バック発送の件。
忖度がはびこっているからこそ、省内では誰も「おかしい!」と言えなかったのだろう、と予想した。
その背景には、冷凍車を自治体ごとに手配している暇がないとか、いちばん安上がりの方法の選択だったとか、いろんな思惑が渦巻いていたのかもしれない。
それはともかく、その結果、いち早くワクチンの接種をされた全国の医療者や高齢者のみなさんの一部には、かなり効果の弱まったワクチンを接種してしまったがために、やり直しが必要な方たちがいるかもしれない(おかしさに気づいて対策を取った自治体は、別だけれども)。
そのような事態の発生可能性を放っておくということは、つまり、行政のミスにより、抗体がきちんとできない人がたくさん出てしまい、ワクチンを打ったにもかかわらず感染が防げなかったという人災がこれから生じてしまう可能性にも目をつむる、ということでもあるのだ。
◇◆◇◆◇
2、メディアの忖度まで蔓延る社会。
にもかかわらず、これほど大事な案件が、大手マスメディアではほとんど報道されない。本当なら、そのような行政の失態を追究しつつ、ワクチンを接種した人たちに注意喚起すべきであるにも関わらず。
でも、東京オリンピックの協賛企業になっているうえ、権力者と食事をして平気な人たちが軒並み経営者として君臨している大手メディアに、そんな報道倫理を求めるのは、もはや無理な話のかもしれない。
そう考えると、永田町や霞が関周辺の組織にはびこっている忖度の問題は、私たちの社会にものすごい害悪を及ぼしているのかもしれない。権力中枢と、その意向を垂れ流すメディアとの馴れ合いによる重い忖度病の真っただ中で、私たちは、よほど意識していない限り、大事な情報にアクセスできなくなっているのだから。
さらにいえば、この件を明らかにしたのは、定期的に開かれている野党合同のヒアリングだった。このヒアリングがなければ、こんなに重大なミスは、明るみにならなかった。
にもかかわらず、野党もだらしないという空気が醸成されている。なにかがおかしい。
◇◆◇◆◇
3、組織内の良心を応援しなくちゃ!
もちろん、このままではいけないと思っている官僚の方たちも、たくさんいる。厚生労働省のことは知らないけれど、ほかの省庁にはそういう方がいるのを知っている。
そんな方たちが中心的に動けるような社会にするには、政治主導のおかしな部分を是正するしかない。そのためには、もう、私たちがいろんな場面で意思表示をするしかない。
メディアにも、経営陣の意向にめげず、現場の目線に寄り添う報道をしている報道マンがたくさんいる。いくら上司に没にされようとも、地域で虐げられている人たちに寄り添う記事を書き続ける記者がいる。
まったく真相に切り込めていないどころか、世論をミスリードしかねないと思うニュースに接したら、そうした良識ある方たちの情報こそ意義があるのだと、きちんと番組に意見を伝えるべきだと思う。
ときには、あきらかにデマを垂れ流すコメンテーターの起用にも疑義を突き付ける必要もあると思う。
最近見た中でひどいと思ったのは、ワクチン開発ができなくなったのは学術会議のせいだというコメントだった。そうしたミスリードに対しては、はっきりと「おかしい」と意見を言うべきだと思う。
手間暇のかかる、地道な活動だけれど、私たちにとって本当に必要な情報を届けてくれるマスメディアを育てるのは、やはり、私たち市民だと思う。内田樹さんが指摘しているように、その国のメディアのありようは、その国の民度を示すものなのだから(※)。
~~~~~
(※)内田樹(2010)『街場のメディア論』光文社新書