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1、お怒りは当然だと思うのですが・・・
たしかに、自分は我慢しているのに、一部の人が河川敷でバーベキューしていたら、頭にくるかもしれません。
若い人たちが都心の繁華街で路上飲みをしていたら、なにやってるんだ!と思うかもしれません。
時短要請や種類の提供禁止要請に応じない飲食店があったら、強権を発動してもらいたくなるかもしれません。
しかも、そうした報道を毎日のように見せられたら、ほんとうは一部の人たちの問題なのに、まるであちこちで起こっている問題だと勘違いしてしまうかもしれません。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてほしいのです。
では、そうした人たちの私権を制限しさえすれば、コロナ禍は収束するのでしょうか?
私は、そんなことをしたら、むしろ状況はひどくなると思うのです。
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2、もし自分が責任ある立場だったら?
なぜそう思うのか? この点について考えるために、みなさんが行政権力の責任ある立場にいて、「延期された東京オリンピックは絶対に実施するぞ!」と本気でこの一年間取り組んでみた、と仮定してみてください。
①海外からの人流の抑制・禁止(※)
②仕事や学業のリモート化のお願いと推進
③関係する部署や保健所等の増員(雇用対策にもなる!)(※)
④PCR検査の拡充:多くの国で実施されているように、希望するときに受けられる体制を整える。できれば、ドイツのように、2週間に1回は検査できる体制を整える。(※)
⑤定期的な疫学検査の実施(※)
⑥局所的・広域的ロックダウンの実施:もちろん、ロックダウンされた地域の事業者への補償もセットで。(※)
⑦コロナ対策病床の拡充、専門病院の設置(※)
⑧コロナ対策のための医師、看護師の確保(※)
⑨ワクチン確保のための多方面同時交渉作戦⇒できるだけ早い摂取の実施(※)
⑩きめの細かい個人単位で所得補償(※)
こういった対策を実現すべく、懸命に取り組んでいる自分がイメージされるのではないでしょうか?
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3、現実は?
では、実際にこの間とられた施策は、どうだったでしょう?
(※)印の項目は、「おかしい!」「対応を早く!」「海外の優良事例を参考にして!」という声がどれだけあがっても、対応が遅かったり、対策が不十分だったりしたのでは?と思われるものです。
たとえば、実際、英国型変異株が確認されてから入国が禁止されるまで2週間もかかりました。いまではいろんな国の変異株が、国内で蔓延り始めている有りさまです。
1年経っても、医療現場の医師や看護師さんたち、保健所の職員さんたち、担当官僚のみなさんの過労問題は、改善されていません。
PCR検査の拡充だって、いまだに実現されていません。多くの自治体で、濃厚接触だと判断されなければ、自宅待機だけを言い渡され、検査してもらえないケースもあります。
コロナ禍の最中にも、公立病院の病床削減という厚生労働省の政策は続き、第4波で病床ひっ迫という現実に直面しています。
非正規雇用の多い女性を中心に、自殺する方が多くなっているという悲しい現実があります。
保障がないと経営破綻するため、やむにやまれず、時短制限要請に応じていない飲食店もあります。
ここで強調しておきたいのは、これらの苦しい現状は、強権発動ができずに①~⑩の施策をとれなかったから生じたわけではない、という点です。現行法制の下でも対策がとれるのに、多くの局面で遅れに遅れているのだとしたら、それは、問題を改善しようとする本気度が政府に足りなかったということにほかなりません。
だから、コロナ禍やそれに付随する混乱が一向に収まらない責任は、公共のルールを守らない一部の人たちにも少しはあるでしょうけれども、けっしてそれだけではないと思うのです。
~明日へ続く~