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1、水産資源枯渇の真因は?
4月30日金曜日の『グッドモーニング』(テレビ朝日)では、水産資源の枯渇が特集された。
近年の海産物不漁の問題は、地球の温暖化による海水温の上昇に原因があるかもしれないこと、それを受けて、農林水産省では水産資源の保護を話し合う会合が開かれていること、などが伝えられた。
期待してみていただけに、ハッキリ言って、この報道内容には不満が残った。
なぜか? それは、水産資源の枯渇の責任が、地球の温暖化にのみ着せられていたからだ。
もちろんそれも重大な原因なのだけれど、もっと、より直接的な人為起原の原因がある。
それは、「トロール漁(または底引き網漁)」だ。
底引き網漁は、その名の通り、海の底の海洋資源を、食用に適さないけど生態系に欠かせない生物、海生生物の赤ちゃんまでふくめ、重い網で根こそぎ持ち去ってしまう。だから、水産資源が枯渇し、持続しなくなってしまうのだ。
【参考になるWebサイト】
トロール漁業:破壊的な漁法で海底が”砂漠化” – 環境ニュース (mongabay.com)
この点をフォローしないと、視聴者には、水産資源枯渇の要因の一側面しか伝わらないと思うのだ。
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2、漁師さんたちは、怒っている。
でも、トロール漁をしているのは、主に水産物の加工を行う大企業。
すなわち、大手メディアにとっては、重要なクライアントでもある。
だから、いくら報道番組とはいえ、テレビ局を維持するための広告料を払ってくれている企業に不利な情報は、流すことができないのだろう。
でも、漁師さんたちは、そんな偏向報道には関係なく、トロール漁の影響が骨身にしみてわかっている。だから、漁業組合は何度も、農林水産省に「トロール漁を禁止してくれ」と申し入れている。
そんな漁師さんたちの海の知識は、ハンパない。
自分たちの取る魚の稚魚が、遠く離れた地で孵化し、旅してきていることを知っている。
だからこそ、おかしいと声をあげ続けておられるのだ。
私が以前お話を伺った、農林水産省まで陳情に行かれた経験のある漁師さんも、怒っていた。
トロール漁を禁止しなければ、日本の漁業は終わってしまう、と。
にもかかわらず、この「トロール漁」という言葉が、水産資源枯渇の特集でいっさい使われなかったのだから、やるせない。
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3,メディアのみなさんへ、たってのお願い!
このように「表」で流れている情報だけでは、ものごとの一面しかつかめない。
かならず、マス・メディアのバイアスがかかっている。
そうなると、視聴者の情報は制限されてしまうのだから、やれることを多角的にやろう!という動きも起こらない。その間に、事態はますます悪化してしまう。
今回のニュースの事例でいったら、「温暖化が魚の取れなくなっている原因なんだ、へぇ~」という感想だけで終わっているうちに、魚の値段がべらぼうに高くなり、気づけば手の届く値段ではなくなっていた、という事態にだってなりかねない。
そうならないようにするために、どうすればいいのか?
トロール漁が問題なのだったら、禁止すればいい。
地球の温暖化よりもずっと、取り組みやすい対策である。
なのに、メディアは、そんな重要な情報を流してくれない。
できることなら、メディアのみなさんには、クライアントに関係なく、真に科学的な態度で、漁師さんたちにじかに取材し、漁業資源枯渇の原因を、多角的に分析した報道をしてほしい。
私たちの明日の食がかかっているのだから。